海の欠片

わんころがCWのリプレイ置いたり設定置いたりするところです。

運命の天啓亭 15~21

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15.藤四郎様作『黄昏の人狼

 

あやつめ、無茶をしおって。

人狼についてはエヌの件があり、冒険者になる前から調べていた。
個体差はある。いくつかタイプがある。
人狼の怨念に取りつかれ人狼となる人間。
人狼に傷つけられ人狼となる人間。
呪いで人狼となる人間。

今回邂逅したのは傷つけることで人狼とする人間であった。
人狼にする相手を人狼側が決め、その者がトドメをさした場合最後の力をもってそやつを人狼にするのだと。

エヌは、余に向けられた攻撃をかばった。
飛び散る血。果敢に挑む仲間ら。
最後に貫いたのは、余の剣であった。



「馬鹿者!いくら汝がすでに人狼だからといって無茶するでない!」

運命の天啓亭に帰るなり、エヌに説教をした。
だって僕だったら何も問題ないし、とぼそぼそと呟いてから。

「……僕は。人狼の苦しみが、よく分かる。
 こんな苦しみ、誰にも背負ってほしくない、それに……

 俺だって。君に、恩を返したいんだよ。」

村のことだって。魔法生物のことだって。
火竜のときは何もできなかったから。

そんなことを言われてしまえば、余からは何も言えなくなって。
馬鹿者が、とデコピンしておいた。

何勝手に満足げな顔をしておるのだ、あやつは。


―― 著者『オクエット』
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16.ナギン様作『夢魔

 

怖かった。
また目を覚まさなくなるんじゃないかって。
ファディが目を覚まさなくなったとき、目を覚ますきっかけになったのはこれだった。
だから今回だってきっと。

……なんだか間抜けなことを言いながら、ファディは目を覚ました。
こっちの心配も知らないで。ホッとしたけれど、三度目はもうごめんだ。



「エナンのおまじないは、よく効きますね。」

穏やかに笑う、ファディの顔を思い出す。
気が付いたら自分の唇を、自分の手でなぞっていて。
あの笑顔が頭から離れなくなっていて。

優しくて、真面目で、いつも気を配ってくれて。
一方でどこか抜けているところもあって、可愛いところがあって。



この、詰まるような、上手く息ができない感覚は。
一体、なんだというのだろう。


―― 著者『エナン』
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-.cacoo様作『黄昏は煉情の墓標』


ファディに好きな人がいる。
それを聞いたとき、俺はどんな顔をしていたのだろう。

色恋沙汰に鈍いとトゥリアやテセラに揶揄われたことがある。
オクエットやエヌには呆れられたことがある。
セヴェンタは共に分からん!と胸を張ってくれた。それを見たヴェレンノが頭を抱えてたのも見た。
ティカは心底馬鹿にするような溜息をついて、ルジェは軽く引いていた。

そのくらいは俺だって分かっていた。
けど、俺も、この依頼でとんでもなく疎かったんだって自覚した。

いつからだったんだろう。
いつから、彼女のことをそんな風に思っていたんだろう。
誰かに恋情を抱いているなんて嫌だ。
そんな想いなんて捨ててしまえと、願ってしまった俺は確かにいた。


告げないのなら。捨てるくらいなら。
自覚してすぐの心を、ファディに伝えた。

例え受け取ってもらえなくても、無碍にはできないはずだ。
優しくて、俺と同じお人よしで、いつも近くに居てくれたから。




「……あなた、今までその気なんてなかったでしょう。なのに、どうして。」

……彼女が、恋情を捨てなくてよかった。


「私に好きな人がいると知って、それで嫌悪感を抱いたと?自分じゃない誰かからの恋情を捨ててほしいと願ってしまったと?」


三度目は、ちゃんと起きている状態で。


「あなた、あそこまでしておいて、どうして私が他の誰かを好きという発想になるんですか。
どこまでも鈍い人なんですから……」

―― 愛してますよ、エナン




帰りの馬車の中で、二つの影が一つに重なった。



―― 著者『エナン』

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-キア様作『トマリギ』


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17.Dr.タカミネ様作『無礼講!ということで』

 

飲み過ぎた。頭が痛い。
ところで。姉貴がめちゃくちゃ酒を飲んだ。

姉貴は、よほど飲まないと酔わないが。
酔ったら……服を、脱ぎやがる……!!


次の日姉貴の昨日の様子を聞いたら完全に手遅れだった。
俺は顔を覆うしかなかった。

「どうした我が弟よ。烏にフンを落とされ近場にはドブしかなく貴重なコカの葉を消費して汚れを取ったときのような絶望顔をしているが。」
「その絶望すぎる原因があんたなんだけどな~~~~~」

胃が痛い。
本当にこの姉貴誰かどうにかしてほしい。



―― 著者『ヴェレンノ』
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18.きいち様作『ピオニーのお茶会』

 

魔法のティーセットが荷物袋に混ざっていたそうで、大変な目に遭った、らしい。
らしい、というのは私にプリンセス?が憑依して、高笑いしたり高飛車だったりした私とお茶会をした、という話を聞かされた。
そのときの記憶が一切ないので、らしいとしか言えない。

疲れたエナンがいたし、喋るティーポットもあったし、そもそも嘘が付ける性格でもない。本当にあったことなのだろう。


労いの意味を込めて、あの後パンケーキを作ってあげることにした。
折角なのでピアニーにお茶を淹れてもらって。

……ところで、とんだ鈍い人だと思っていたのに。
あの人、凄くぐいぐい来る……嬉しいけど、嬉しいけど……!!



―― 著者『ファディ』

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19.ほしみ様作『知らぬが仏』


あんなやつだとは思ってなかった。
シスターの恰好をした聖北教徒だと見せかけて暗殺者をやっていることは知っていた。
けど、けど、このところ起きてた連続殺人犯の犯人が、ティカだったなんて!

楽しそうに人を殺し、ぺろりと唇を舐めるあの人の顔が脳裏から離れない。
仕事でもあるんですよ。
勿論、殺すのは快楽でもあるんですが。
にっこり笑って、ナイフについた血を乱雑に地面に払った。


知らぬが仏。
本当に、その通りだと思った。

知らなければ、気に食わないシスターもどきだ、で済んでいたのに。
あたしはこれから、あの人のことをどんな目で見ればいいのだろう。

これからも、仲間に何も言わず、変わらずに……いられるのかしら……



―― 著者『ルジェ』

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20.キア様作『感謝の贈り物を愛しき君に』


エナンがいなくなって、皆で必死に探して。
暫くエナンはお部屋から出てこなくなってた。

ファディお姉ちゃんは何があったか知ってるみたいだけど、教えてくれなかった。
暫くそっとしてあげてください。
笑ってるのに、なんだか抱え込んでるような表情だった。


テセラと相談したんだ。
何か元気になるお手伝いができないかなって。
二人でうーんと考えて、考えて、思いついたの!

親父さんや娘さん、オクエッタちゃんに教えてもらって美味しいアップルパイを作ったよ!
これで皆で仲良く食べたら、嫌なことなんてすーっかり消えちゃうよね!


持って行ってあげたら、エナン、泣き出しちゃった。
だめだったかな?謝ろうとしたら、次にはテセラと一緒に抱きしめられてた。

どーいたしまして、でいーのかな?


―― 著者『トゥリア』
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21.しろうさぎ様作『貴族達の晩餐会』


なんとも胸糞悪い依頼だった。
流石に私とて、人間を食う気は知れない。

だが、魔物にとって人間は飯。
そして人間を食う人間というやつも、いることは知っている。

目の当たりにしたが、気持ちのいいものではない。
これ以上犠牲者を出すわけにはいかなかったから、その場では殺すことを判断した。


自警団に報告したが、すっかりあいつらを取り逃がしてしまった。
殺した手ごたえはあった。
殺される恐怖をあいつは抱いてなかった。

ティカが後で言っていたな。

「何されるか分からなかったので黙ってましたが~ あれは死んでも生き返る、タチの悪い人間でしたね~」

そんな面倒なやつがいるのか。
何で分かったのか、聞いたがはぐらかされた。

何かあるだろうな、とは思ったが。
全く、私はまだまだ強くならねばならぬようだ。



―― 著者『セヴェンタ』

 

 

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