海の欠片

わんころがCWのリプレイ置いたり設定置いたりするところです。

双花島調査記録

※2020.2.14~開催のフタハナの後日談(まとめ?)となります

※ロゼ視点となります

 

 

~ フタハナ島 調査記録 ~


■1日目(準備期間1日目)
目が覚めると草原だった。時刻は深夜。
依頼から帰ってきて、酷く疲れていたときに手紙が傍にあったことは覚えている。呪いの手がかりがあるのかもしれないと思ったのと、疲れからあまり頭が働いておらず、それが魔法の品だと考える余地なく軽率に名前を書いたことは覚えていた。
手持ちの道具は存在。人に向けて短剣と弓矢は使えないが、狩りには使うことができる。人に対抗するためには全て現場調達になるだろう。
記憶通りなら、この島で殺し合いを行い、最後に残ったものが『フタハナ』となり、願いが一つ叶えられるそう。
開催は7日間。やり方が気に食わない。自分はフタハナに、このゲームマスターに反感することにする。
問題は、呪いだ。自分が自分でなくなる感覚がする。抵抗するための手段を、『目的』を早急に作らなくてはならない。先ほどの反感を、ひとまずは目的として動くことにする。

 

・あるた、コゲツキと知り合う
 あるたは腕が4本、鳥の羽、犬の耳を持つ医者。どことなく性格が子供っぽい。家族が大切。家族を失った自分としては楽しい話はできないと思われる。
 コゲツキは美味しいものを作ることが夢。猫のような耳を持っているが、フードのため獣人かどうかは分からない。
・アミーからバディ申請を受ける
 アミーは一つ目の少女……に、巨大な腕が4本取り巻いている。腕が大きい。
 生き抜くために、そして自分自身の呪いのためにも慎重な判断をするため一時保留。

 

方針:殺しに加担する者を殺す


―― それにしても。
ラドワなら、この島を楽しいと思うのかしら。殺し合いを肯定し、フタハナ関係なく殺しまわるかしら。きっと、殺すな。うん、間違いない、あいつなら喜んで殺しに行く。
そもそも以前、殺し合いやったーと言っていた気がするし、もしかして一度この島に来たことがあるんじゃないかしら。
こんな状況になっても、真っ先に思い浮かぶのはラドワだからなんか悔しい。しょうがないか、こんなラドワの喜びそうな島だったんなら。

 

 

■2日目(準備期間2日目)
アミーと引き続き会話をする。どうやら彼女は別世界の人間で、口を持たず、一つ目で、腕が離れているのだそう。自分の知りうる人間と微妙に違うが、世界が変われば人間の定義も変わるのだろう。興味深い。
彼女の世界は、海から異形がやってくるのだそう。引き込まれることもあるらしく、ずいぶんと穏やかな海ではない。己の知る海を話せば興味を持ってくれた。海というものを好きになってくれると自分も嬉しい。
また、この島には七色のブーケたるものが存在し、世界に散らばる赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色の花を集め、花束を作れば元の世界に帰れるのだそう。そういえば、ラドワが緑の花を持っていた。緑の花が咲いた前日、寝言で「殺していいの!?やったーーー!!」と言っていたし、十中八九この島で手に入れたものだろう。
それから、アミーの願いを聞いた。そんなに大きなものではないと聞いたが、自分とバディを組むということはフタハナをあきらめろということだ。だから、今のうちに確認しておきたかった。アミーには妹が居たのだが、海に誘いこまれ死んだのだそう。島に来たのは妹を取り返すため、だそうだが、多くの人を殺すことと妹を天秤にかけたら、人を殺すことはできないと。
『ぼくの願いにそんなに重さはなかった』、と言った。
あまりにも腹が立った。願いに大小はない。本人が抱く想いをどうして否定できようか。だというのに、彼女はその願いを自分で否定した。
一番否定してはいけない人が否定した。
だから気に食わなくて、思わず怒鳴った。きっと、このときの感情は、悔しさだ。
強く願いを抱ける者の、自分にはない想いがある者への、嫉妬だ。
結果的に、考えを改めてもらえたようでよかった。とはいえ、妹を助ける手段をあきらめろと言いながら、その願いをあきらめるなと言っているので惨い要求だとは思う。
何か手助けできる術があればいいのだが。

 

・アミーをバディとする。
 他にも会話をしたものはいるが、やはり呪いの件を考えると軽率に誘いづらい。事情を聞いた上でバディになると言ってくれた彼女に感謝。
・アミーから提案してもらった『目的』を遂行することにする。
 七色の花束を作るため、明日は花を探すことにする。
・或る剣士Q、アルジャと知り合う
 或る剣士Qは世界を救うためフタハナになるそう。犠牲の上で成り立つ生は肯定できない。敵対を宣言。
 トレジャーハンターのネズミの亜人種。フタハナのため、殺戮を肯定する者。勿論敵対を宣言。いつか、浮浪者流で殺し合いをする約束をした。

 

方針:殺しに加担する者を殺す、七色の花束を作る


―― ラドワがこの島に一度来たことがある可能性が高くなった。
ラドワは緑の花を持って帰っている。なんとなく大切なものなのだと、心落ち着くのだと言っていた。
実際あれから夜中に人を殺しに行くことはなくなった。連続殺人事件がふっと消えたので、街も首を傾げてた。
島での相棒と共に生き残って、帰ってきたのだろうか。あれはそう簡単に死ぬようなやつじゃないし、そんな気がしてきた。

 

 

■3日目(1日目)
呪いが牙を剥く。この島では海竜の呪いの代償がより強く発生するようだ。呑まれないよう、自分が自分であるため、抵抗していかなくては。
1日目は最低限の武器を揃えるため廃墟で物品回収をする。よく分からない武器が多いが、投げれば使えるので問題はない。投擲の技術があってよかった。それとはちろく、という鉄の塊を見つけた。古代文明の遺品か何かだろうか。起動させることができるそうだがよく分からない。とりあえず言われた通りにやってみたところ海に落ちた。もう使わない。
夕方からはアミーの力で地形に不自由を覚えなくなった。レンジャーである分、地形の不利はある程度カバーできたがまるで草原と変わらず駆動できるのは助かる。しかし、彼女は戦えないそうなので極力人に襲われないようにしなければならない。自分が戦うときは一時的にバディを解消することも視野に入れるべきか。また、アミーは日が出ている時間帯は活動できないそう。日中に彼女に頼ることは難しいか。

 

・紫の花2本を回収
・アミーが藍の花を1本回収
 同時に悲惨な映像を見せられていた。指をさして笑っておいた。
・スゥと知り合う
 食材、もといドラゴン。ドラゴンには見えないが、面白いので食材ということにしておこう。

 

方針:殺しに加担する者を殺す、七色の花束を作る

 

―― ずいぶんと勝手が違うけど、ラドワは上手く戦えたのかしら。
ふとそんな疑問が過る。だって、魔法しか扱えないあいつがどうやってこの島でやっていくのか。あと調理とか探索とかも専門外じゃない。
あ、なんか悔しくなってきた。あたしの居ないとこでラドワが知らない誰かと上手くやってたって考えるとなんか腹立つ。あたしのようにサバイバル知識があったのかしら。……いやいや、冒険者なんだから最低限のあれそれはできるっての。てかあたしが教えたんだし。レンジャー知識の最低限は皆知ってるって。

 

 

■4日目(2日目)
しくじった。初めて死んだ。同時に、思い知る。
死が怖くない。自分が自分でなくなる感覚に何も覚えない。あぁ、死ぬんだな、と冷静な自分がいることに唯一ほんの少し恐怖と、そのことに安堵を覚えて ――生き返った。どうやらこの島の特性にアミーが不思議な術を使ってくれたのだそう。彼女は特に自分のことを心配しなかった。よかった、呪いに呑まれれば彼女は何も気にせず自分を捨ててくれることだろう。
因みに死んだ理由は喧嘩。青い花を探している途中、近場で傷まみれの男が青い花を発見し回収。見ていると煽られたため、煽り返し喧嘩を売る。喧嘩に乗ってくれて、殺してでも奪い取るという状況が完成する。狙い通りだ。こちらのかけるものは、今朝回収した赤い花。赤と紫のどちらをかけるか考えたところ、汚染地帯はアミーの力で探索しやすく狭いため探索もしやすい。あちらにはもう一度汚染地帯にはいきたくない、毒になるとアピールをすればほら、赤をかけるよう促してきた。
ここで勝って、青い花を余裕の表情で奪い去れたのなら完璧だったのだが。この島の者の実力は底知れない。今一度、肝に銘じておく。
それからしばらくは、島の最果てでスゥとその男とあとなんかやってきた色々と談笑。殺し合いが行われているとは思えないほど、穏やかな時間が流れた。
アミーとの会話で。自分を蘇生する力があれば、妹を助けることはできなかったのかと尋ねる。肉体の蘇生は成功したそうだが、魂は海に捕らわれたままだと返ってくる。それにしても、自分の街での死生観の、『海に還る』という話とそっくりだ。全ては海から生まれ出て、全ては海に還る。そうして命の輪廻が行われているという考え方。それを話すと、アミーは震えた声を漏らした。あちらでは、海に引きずり込まれる者は『海に還る』と口にするそうだ。
だから、約束をした。思いついた。話している場所がここでよかった。
―― 花束が集まったら 最果ての海を見ながら帰ろう 還るのではなく 帰ろう
確かに、そう約束した。

 

・赤の花2本を回収
・青の花1本を回収
・アミーが黄の花を2本回収
・傷まみれの男の名前を聞きそびれた
 どうやら喧嘩っ早い戦闘狂のよう。ゲイルと似ているなと思ったが、ゲイルの方がバカでひねくれてない
・黄の花をもらう
 黄は、自分にとって良縁の印だ。この母の形見のリボンも、全てのきっかけとなったラドワの眼も、始まりとなったアルザスの眼も、アミーの腕も黄色なのだから。
・アミーに動物調査を頼まれる。確かにこの島にいる生き物と自分たちの世界と比べると面白いものがある。

 

方針:殺しに加担する者を殺す、七色の花束を作る、動物調査


―― もし生き返るとしたんなら。
ラドワも、一度は死んだのかしら。誰かに生き返らせてもらったのかしら。
ラドワなら、死ぬとき何を考えるんだろう。殺しまわって楽しかったって満足しながら死ぬのかしら。それとも、何も思わないのか、はたまた死にたくないと泣きわめくのか。最後だったら傑作だけど、それはあり得ない気がする。
そもそも、あいつが死ぬようなヘマをするとは思えない。きっと、生きぬいて楽しかったと満足して島を去ったんでしょう。

 

 

■5日目(3日目)
あ さ に あ お い ろ の は な を に ほ ん み つ け た
ふ ざ け ん な
き の う の が ん ば り は な ん だ

それは置いておき。アミーが不思議な糸を見つけた。そこには何もかもを覆すかのような、法外な、理に背くような奇跡が込められている。奇跡を信じない自分が信じさせられる程度には、この蜘蛛の鋼糸は『ありえないもの』だった。
しかし、彼女にはその力を扱うことはできない。自分には扱えるが、彼女にはその術はない。しかし、ここにはそれを扱うようにするための奇跡の欠片、フタハナの欠片が存在するのだという。またやるべきことが一つ増えた。

そ の あ と も う ひ と つ い と が み つ か っ た ん で す け ど ね

これで終わればよかった。
これで済んだのなら、ただの笑い話だった。
見つけた先で男と談笑している最中、突然斬りかかられた。油断していたわけではない。とっさに応戦するが、まるで歯が立たない。
辛うじて、自分は生き延びた。しかし、アミーが殺された。
否。
アミーは、初めから死んでいた。
アミーだと思っていた者は、アミーではなかった。
霊薬エリクシール、個体名をキトリニタス。鳥を模した液状ゴーレム。
アミーを乗せていた腕が、本体で。自分が本体だと思っていたアミーは、彼の妹で、すでに死んでいた。
アミーは海からキトリニタスをサルベージし、意志疎通できる彼を兄と慕った。
アミーを偽ったのは、自分と人として接するため。
全て、洗いざらい聞いた。

とりあえず名前が長いのでキトりんと呼ぶことにした。


・なんかごつい武器と橙の花、アイテムソナーと狐火、騎士の魂とカルビ肉を交換
・実はこの時点でフタハナの欠片を鶏鳴から橙の花と交換してもらう。簡単に手に入ってしまった。
 が、日がある以上、自分で見つけたい。保険として懐には入れるが、あくまでも見つからなかったときの保険とする。
・襲われた際、そいつを鬼灯という男が殺してくれた。東方出身の見た目をしている。
 殺し合いに参加しているそうだが、恩人には変わりない。追撃を食らっていればどうなっていたか分からない。心からの感謝を。

 

方針:殺しに加担する者を殺す、七色の花束を作る、動物調査


―― 悔しい
やはり自分は、誰が死んでも何も思うことはできない。
涙の一つも出ない。死んだ、その事実を冷静に受け止める自分がいる。
それが無性に悔しくて。腹が立って。
どうして泣けないのか。泣くことができないのか。
悲しいはずなのに。人が死んだ、だから悲しい、そう考えなければおかしいはずなのに。
何も、どうしても、心が動かない。

ラドワ。きっとね。
あたしはあんたが死んでも、泣くことができない。
あんたが死んでも、あんたが死んだってことを認識して終わりなんだと思う。
ねぇ、冷酷でしょう、薄情者でしょう。
こんなあたしが、あたしが一番悔しいわ。

 

 

■6日目(4日目)
フタハナの欠片を探すため、一日探し回る。島の2割を歩いたが見つからない。代わりに見つかったのは大量の緑の花。4本目が見つかったときに、いいことを思いついたのでできる限り沢山の緑の花を集めることにする。最終的に11本集まった。後は砂漠でスギ花粉に見舞われて料理をしたら大爆発して大変なことになった。まあいいか。
キトリニタスの居た海の底とやらは翠色だったそうだ。自分では意識したことはなかったが、自分は髪も瞳も翠色だ。予想はしていたが、彼は翠が好きではないそうだ。そらあそうだ。
なので、仕返しをした。キトリニタスはキトリニタスという存在を偽った、だから自分は緑の花を、ロゼという色を押し付けた。
自分という色を好きにさせてやる。自分との出会いを全面肯定させてやる。
一つの、意志表明でもある。必ず、妹を生き返らせてみせる、と。
夜にはアルジャとの約束を果たす。互いに互いの意志をかけた、殺し合いでもなく喧嘩でもなく、決闘を行う。
何が何でもフタハナになるという意志と、何が何でもフタハナを否定するという意志。この島でずっとお世話になってる双剣を握りしめ、撃ち込む。
血が沸き立つような思いだった。高ぶる感情があった。これは怒りか。気に食わない、殺し合いに便乗する憤慨か。
いや、あぁ、違う。
これは。
喜びだ。全く違う意志を抱いた者が、己の意志を信じてぶつけ合う。
己の心が、意志が、肯定される。それに対する強き意志が、ぶつかる。
決闘には負けたけれど。きっと、この瞬間は、あたしは、確かに人だった。

 

・緑の花を11本回収する
・青、橙の花をそれぞれ1本ずつ回収する
アスタリスクに声を掛けられ、橙の花の取引が成立する
 昨日のことを、相棒が死んでも何も思わない自分を薄情者かどうか尋ねた。すると彼女は、自覚があり抗うのならば改善される。ちゃんと人であると、そう言ってくれた。そのことに、本当に安堵したあたしがいた。
・ラドワが樹氷を作ったと思われる場所へ足を運ぶ
 自分の血を垂らす、海竜の魔力を流すだけで少し雪が降った。なかったことになったとしても、しっかりとラドワとその相棒の残した爪痕は存在していた。
・エンゲージリングを拾う。使い道を思いついたので、そっと持っておくことにした

 

方針:殺しに加担する者を殺す、七色の花束を作る、動物調査


―― よく考えなくても、真っ向勝負なんて柄じゃないのよね。
だってあたしの職業レンジャーよ?カモメの翼の盗賊担当よ?真っ向勝負とかそれとかアルザスとかゲイルがやることじゃない。って言ったら、あっちだってトレジャーハンターだし条件は一緒か。
決闘とか、何が楽しくてあんなことすんだろって思ってたけど、今ならよくわかるわ。
あぁ、それと。ねぇラドワ。あんたの持ってるのって、緑の花なのよね。
ふふ、あたしの色じゃない、それ。たまたまなんだろうし、あんたのこの島での相棒との縁なんだろうけどさ。
勝手に思い上がっちゃうわね。なんだかすごく嬉しいわ。作らない、心からの感情よ。

 

 

■7日目(5日目)
今日はずいぶんと寝ていた。すぐに探索に出ると同時に、この島で見つけた動物調査の結果をキトリニタスに手渡す。それから取引で橙の花を入手し全ての色の花を揃えた(藍が1本少ないが)。後はフタハナの欠片だけだ。
ここでキトリニタスは提案する。最終日まで残る気はあるのかと。フタハナの欠片を見つけるまで居残る気であったが、それはいったん置いておいてと言われたので、フタハナの欠片抜きで考える。
ここから先は、殺し合いに肯定的な者しかいない。脱出手段がある以上、否定的な者はすでにこの島を去った。つまりは、『フタハナとなりたい者』と『殺し合いが行われること前提でここに居残りたい者』の、2種類だ。今更殺されると思っていなかったの言い訳は通用しない。現に、殺し合いは激化してきている。
それを考えると、自分が居残る意味はない。最も、フタハナの欠片を見つけずに帰るのは不本意なので残るつもりだが。

そう伝えると、キトリニタスは提案した。
『欠片の捜索を止め、きみの手そのものを貸してほしい
 ……奇跡の行使を――きみ自身が手伝ってはくれまいか』

方法を聞けば、糸の奇跡と霊薬としての奇跡を重ね、因果を繋ぐというもの。
念のためキトリタニスが『死ぬ』ことはないのかと尋ねると、むしろ欠片を使い己自身で蘇生を行った方が危険だという。嘘を言ってはいないのだろうが、信じ切れるものではない。というより、完全に無駄になりそうだったので、ここで正直に話した。
実は欠片持ってましたと。
めちゃくちゃはーーーーー?って言われました。

これにより、失敗するリスクはほぼゼロになったらしいので、まあ、結果オーライ。
でも『島を出よう』と言われたときの保険のために実は藍色が1本しかないと黙っていたわけで。そしたらまさかの藍色は2本ありましたとバラされたわけなのだが。
が、ここで1日時間の猶予と共に、もう一つ目的ができる。

妹の分の、花束の作成だ。


方針:もう1つ花束を作り、最果ての海で妹を蘇生、3人で元の世界に帰る


―― そういえばあんたは緑の花だけよね。他の色はどうしたの。
いや、あんたの性格を考えたら、途中脱出なんてありえないわよね。じゃあやっぱ緑の花に好かれたってことかしら。
そう考えたら、お揃いかもね、あたしたち。だってあたし11本も、いや見つけた本数だけなら12、13本は見つけたし。……あ、流石にその緑の花を、あたしとの奇跡って言い張るつもりはないわよ。それは、あんたとあんたの相棒との縁。
……思い上がるものは思い上がるけどね?

 

 

■8日目(6日目)
終焉、というものを見た。星を降らす魔術を唱える者が、3人。反感は覚えたが、ここでの殺し合いはもう肯定されたもの。だから止めることはなく、己の目的を遂行する。あくまでも今はキトリタニスが相棒であり依頼人。目的をはき違えることはしない。
足りない花は意外と少なく、藍と紫だけだった。藍は朝に見つけられたが、紫がなかなか見つからない。その際いつか話した剣士が居たので挨拶をする。……死んでいた。彼はフタハナにはなれなかったようだ。
己の意志を、エゴを貫いていけと。まるで自分にぴったりの応援を受け取りながら、紫の花のありかを周囲の者に教えてもらい、回収する。これで3人分の花束がそろった。後は、キトリタニスの妹、アミーを蘇生するのみ。

呼ばれる。
最果ての海を見る。
考える。生き返らせたいと願う、その想いを。
死んだとして、自分は何も思うことがない。何も突き動かされない。実感した。事実を突き付けられた。
親のことが、そうだ。両親が死んだ際、悲しさよりも恐怖よりも、悔しさが自分に残った。
竜災害。海と共に消えた家族を思い出す。
共に逃げようと言ったけれど、海と共に生きる者だから海の意志は私たちの意志だと。
思えば、神様嫌いはここからなのかもしれない。
さて、そんな両親を生き返らせる術があるとして、縋る自分はいるだろうか。
結果は、否だ。悔しさこそ覚えたが、それ以上の感情はない。両親の意志を否定できない自分がいるのだ。
だが。
ある一人の冒険者を、雪を思い出す。
失わないよう。絶対に、手放さないよう。
どこまでも手を伸ばし続けられる。
それはつまり。
―― 形こそ違えど、願うことはできているじゃないか

結果的に、反魂は成功した。
しかし、記憶はなく、キトリニタスのことどころか自分の名前すらも分からなくなっていた。持っていた関心や興味も、全て失っていた。
それを、記憶をなくした少女を自分はアミーとイコールで結びつけることはできない。記憶がなくなれば、それは同じ身体の別人だと自分は考える。
されど、彼はこれでよかったのかもしれないと言った。
引きずり込まれる心配が現状ないのだと。好奇心や関心を得た人間が海に飲み込まれるが、そうでなければ海には引きずり込まれないのだと。
彼は言った、遠くへ行くと。海の綺麗な場所へ行くのだと。

いい目標だと思った。綺麗な海を、自分の好きな海を知ってほしいから。
それを聞いて最後に、蜘蛛の鋼糸を借りて、加工をする。元々は海に引きずり込まれないようにと思って作る予定だったが。
エンゲージリングに、蜘蛛の鋼糸を巻き付け、一つにする。2人がいつまでも共にありますように。固い絆で結ばれますように。これがあれば、もう海に還ることはないだろう。

ブーケを作る。3人で、帰るために。
最後にキトリニタスは、黄色の花を自分に手渡した。
ここでの縁の印に。黄色に輝く霊薬の鳥の、その色を。
彼の色を、自分に手渡した。


もしこの記録が残っていれば、あたしよ、覚えておいてほしい。
この黄色の花が、大切なものであることを。殺し合いの島でできた、良縁の印だと。
どうかどうか、覚えていてほしい―― 

 

 

 

 


「…………って、記録が残ってたんだけどどう思う?」

 

時刻にして深夜。依頼があるため寝ようとしたものの、空腹を覚え夜中に起きた。そこで雪が……ラドワが声をかけてきて、一緒に夜食を食べることにしたのだった。
不思議な夢を見て目が覚めた。依頼は休みだったのでのんびり過ごしていたが、不可解な調査記録と花があったことに気が付き、少し調べものをしていた。結果的に、ここに関する記録は何も分からなかったわけなのだが。

 

「どうって……また変な夢を見たわねって。」
「いやあんたも覚えがあるはずなのよ。だってあんたも行ったことがあるって記録がされてんだもん。」
「えぇ……いや、でも、覚えはあるようなないような……確かに緑の花を持ってるし、大切なものだって感じもするんだけども……あー、まって、樹氷見た、ような、気がする、えーと……」

 

あぁ、これはあるわ。そう確信して、野菜スープに口をつける。
ちゃんとした料理を食べるのがずいぶんと久々な気がした。なんだかカルビ肉ばかり食べていたような気がするのだ。

 

「……ソラ。」
「……空?」
「え、うーん……いや、なんだったかしら。なんか、大事なこと、だったと思うのだけれども……だめだわ、思い出せない。」
「ふーん?この記録によると、あたしはキトリニタスってやつと相棒を組んでたのねぇ。相棒ってか、冒険者依頼人?」

 

夢日記にしてはずいぶんと字が綺麗だ。ラドワはロゼの調査記録を取り上げ、ぱらぱらとめくる。
レンジャーの癖か、それとも夢であると知っていたからか。残るかどうか分からない調査記録をつけることにしたのだろう。ここまで長文に出来事を書き連ねるのは彼女としては珍しい。

 

「一つだけ言えることがあるわ。
 アミーはソロモン72柱の悪魔の名前だし、キトリニタスは錬金術五色の黄化のことじゃない!っていうかエリクシールって賢者の石のことじゃない!なんでひっつかまえてこなかったのよそんな貴重なもの!!」

 

わぁ、さすが屑の言葉。
夜中なので小声のシャウトであったが、あまりにもあんまりな言葉には違いない。流石ラドワねぇと、けらり、笑いながらロゼは黄色の花をなでる。

 

「アミーは人間の名前で、キトリニタスはその兄の名前よ。」

 

そうだ、これは人間とその弟の名前だ。
こればかりは譲れない。夢は、覚めるものだとしても、いつかは完全に風化してしまう記憶だとしても。


これだけは、譲れないと。翼は、そう思った。

 

 

 

 

 

☆あとがき

ロゼちゃんだったら活動記録つけてるよな?と思ったのと意外と情緒が限界だったので吐き出すためにやりました。てかあの、ロゼちゃん……ラドワさん大好きかよ……これラドワさんが後ほど片思いするよりロゼちゃんが片思いしてるみたいなんだけど……いや間違いじゃないな、間違いじゃないな!!
18話後の時間軸の想定です。あとお帰り会としてoyu様作『深夜のはかりごと』をプレイしたので深夜のはかりごとでロゼラド会話してるってことになりました。

 

改めて。楽しいフタハナをありがとうございました!!